sqlパッケージ周りのコードリーディング
業務でGoのデバッグをするためにsqlパッケージ周りのコードを読む必要があって、いい勉強になったのでメモがてらまとめておきます
MySQLを使っているのですが、このimportをよく見かけます
import _ "github.com/go-sql-driver/mysql"
mysqlドライバのコードを直接参照しないからこうしてるのですが、直接参照しないのにどうやってmysqlのメソッドを実行しているのだろうというのが疑問に思いました
多分interface使って呼び出してるんだろうなくらいのぼんやりした理解度でした
これはその通りだったのですが、ちゃんと理解できたら色々繋がって面白かったのでまとめます
今回はMySQLドライバを使っているので
- MySQLドライバによる初期化処理
- 実際にクエリ実行する時の処理
という順で見ていこうと思います
適宜コードを貼って見ていきますが、説明上不要な部分は省略します
今回見たパッケージのバージョンは以下の通り
MySQLドライバによる初期化処理
まずDBへの接続処理を行います
import (
...
"database/sql"
_ "github.com/go-sql-driver/mysql"
)
func main() {
dbconf := "user:pass@tcp(127.0.0.1:3306)/database?...."
db, err := sql.Open("mysql", dbconf)
...
}
さて、疑問だった _
でのimportが早速出てきました
これをもう少し深ぼって見ていきます
実際に中を覗いてみると、init関数があることがわかります
func init() {
sql.Register("mysql", &MySQLDriver{})
}
これはsqlパッケージのRegister
メソッドを呼び出しています
type Driver interface {
Open(name string) (Conn, error)
}
func Register(name string, driver driver.Driver) {
...
drivers[name] = driver
}
これが何をしているかというとdriver
をdrivers["mysql"]
に設定しています
driver
というのはOpen
メソッドをもつinterfaceで、先ほどのMySQLDriver
はOpen
メソッドが実装されているのでこのinterfaceを満たします
mysqlドライバを_
でimportした時点ではこの処理が走るのみです
さて、次にこの状態で db, err := sql.Open("mysql", dbconf)
が行われると何が起こるかを見ていきます
func Open(driverName, dataSourceName string) (*DB, error) {
driveri, ok := drivers[driverName]
if driverCtx, ok := driveri.(driver.DriverContext); ok {
connector, err := driverCtx.OpenConnector(dataSourceName)
if err != nil {
return nil, err
}
return OpenDB(connector), nil
}
}
先ほど登録したdriverがまず取り出されています。これが先ほど格納したMySQLDriver
の構造体です
それがDriverContext
interfaceを満たすかどうかをチェックしています
MySQLDriver
はdriver.Driver
interfaceも満たしていますが、同時にこのDriverContext
interfaceも満たしています
つまりOpenConnector
メソッドを持っているのでこれを実行するとconnector
が取得できます (connector
がどういうものかは後述します)
それを引数にOpenDB
メソッドを呼び出しています
OpenDB
の中を見ていきます
func OpenDB(c driver.Connector) *DB {
ctx, cancel := context.WithCancel(context.Background())
db := &DB{
connector: c,
...
}
go db.connectionOpener(ctx)
return db
}
先ほど取得したconnector
がsqlパッケージのDB
のconnector
フィールドに格納されます
そしてconnectionOpener
メソッドで接続処理をしています
さてここでdb
がreturnされていて、これが呼び出し元に返ってきます
db, err := sql.Open("mysql", dbconf)
つまり、db
の中にはdriver.Connector
interfaceを満たすconnector
が格納されていて、これが後々mysqlのメソッドを実行する上で重要な役割を果たします。
connector
がどういうものかはこの後じっくり追っていくのでここでは説明しません。
とりあえずこれから使用するdb
の中にはconnector
が格納されていて、それはMySQLDriver
のOpenConnector
メソッドによって返されたものであることさえ理解できてればここではokです
実際にクエリ実行する時の処理
ここでは例としてQueryContext
で処理を追っていきます
以降では先ほどのdb
を使ってクエリの実行をした時の流れを見ていくわけですが、先に結論を書くと先ほど格納したconnector
が持つConnect
メソッドを呼び出すとmysqlConn
というmysqlのconnectionの構造体が得られるようになっており、これがQueryContext
のinterfaceを満たしているのでそれを呼び出すとmysqlのQueryContext
が実行されるというカラクリです
では詳細を見ていきます
query := `SELECT ...`
db.QueryContext(ctx, query)
(実際は独自のstructでラップされていると思うのでこんな風にdb
から直接呼び出すことはあまりない気もしますが。)
func (db *DB) QueryContext(ctx context.Context, query string, args ...any) (*Rows, error) {
var rows *Rows
var err error
err = db.retry(func(strategy connReuseStrategy) error {
rows, err = db.query(ctx, query, args, strategy)
return err
})
return rows, err
}
QueryContext
の中ではretry
メソッドを呼び出しつつその中で実際に処理する内容であるquery
メソッドを呼び出しています
query
メソッドの中を見ていきます
func (db *DB) query(ctx context.Context, query string, args []any, strategy connReuseStrategy) (*Rows, error) {
dc, err := db.conn(ctx, strategy)
if err != nil {
return nil, err
}
return db.queryDC(ctx, nil, dc, dc.releaseConn, query, args)
}
func (db *DB) conn(ctx context.Context, strategy connReuseStrategy) (*driverConn, error) {
...
ci, err := db.connector.Connect(ctx)
dc := &driverConn{
db: db,
ci: ci,
...
}
...
return dc, nil
}
まずconn
メソッドを呼び出していてその中ではdb.connector.Connect
というメソッドを呼び出しています
さて、再びconnector
が登場しました
query
メソッドの中身を見ていく前に、まずはconnector
が何者なのかを紐解いていきます
これは以下のようなConnector
というinterfaceを満たすものです
type Connector interface {
Connect(context.Context) (Conn, error)
Driver() Driver
}
type Conn interface {
Prepare(query string) (Stmt, error)
Close() error
Begin() (Tx, error)
}
Conn
というinterfaceを返すConnect
メソッドを持つことがわかります
このconnector
というのは初期化時にmysqlドライバによって取得されたものでした
ではmysqlドライバがconnector
を取得した実装を見ていきます
func (d MySQLDriver) OpenConnector(dsn string) (driver.Connector, error) {
cfg, err := ParseDSN(dsn)
if err != nil {
return nil, err
}
return &connector{
cfg: cfg,
}, nil
}
connector
という構造体を返しています
これがConnector
interfaceを満たしているわけですから、このconnector
はConnect
メソッドを実装しているはずです
実際にそれを見てみましょう
func (c *connector) Connect(ctx context.Context) (driver.Conn, error) {
...
mc := &mysqlConn{
maxAllowedPacket: maxPacketSize,
maxWriteSize: maxPacketSize - 1,
closech: make(chan struct{}),
cfg: c.cfg,
}
...
return mc, nil
}
Conn
interfaceを満たすmysqlConn
という構造体を返していますね
ここまでわかれば十分なので元のquery実行部分に戻ります
再掲すると以下のようになっています
func (db *DB) query(ctx context.Context, query string, args []any, strategy connReuseStrategy) (*Rows, error) {
dc, err := db.conn(ctx, strategy)
if err != nil {
return nil, err
}
return db.queryDC(ctx, nil, dc, dc.releaseConn, query, args)
}
func (db *DB) conn(ctx context.Context, strategy connReuseStrategy) (*driverConn, error) {
...
ci, err := db.connector.Connect(ctx)
dc := &driverConn{
db: db,
ci: ci,
...
}
...
return dc, nil
}
db.connector.Connect(ctx)
で返されたci
は先ほど見たmysqlConn
です
connector
はinterfaceなのでsqlパッケージでは単にConnect
メソッドを呼び出すだけで、mysqlに依存せずmysqlConn
が取得できているのがわかります
conn
メソッドはmysqlConn
をdriverConn
のci
というフィールドに格納してdc
を返しています
なるほど、ここでコネクションプールの管理をしているわけですね
query
メソッドはqueryDC
メソッドを呼び出していて引数にこのdc
を渡しています
func (db *DB) queryDC(ctx, txctx context.Context, dc *driverConn, releaseConn func(error), query string, args []any) (*Rows, error) {
queryerCtx, ok := dc.ci.(driver.QueryerContext)
if ok {
...
rowsi, err = ctxDriverQuery(ctx, queryerCtx, queryer, query, nvdargs)
}
}
先ほどのci
がQueryerContext
を満たしているかどうかをチェックして、満たしている場合はctxDriverQuery
メソッドを呼び出しています
引数に渡しているqueryerCtx
はinterfaceを満たす、つまりQueryContext
メソッドを持つことが保証されており、繰り返しですがその実体はmysqlConn
です
ではctxDriverQuery
を見ていきます
func ctxDriverQuery(ctx context.Context, queryerCtx driver.QueryerContext, queryer driver.Queryer, query string, nvdargs []driver.NamedValue) (driver.Rows, error) {
if queryerCtx != nil {
return queryerCtx.QueryContext(ctx, query, nvdargs)
}
...
}
QueryContext
を呼び出しています
このqueryerCtx
は実体はmysqlConn
ですから、実際の処理はmysqlパッケージのQueryContext
が実行されるわけです
こうしてsqlパッケージはmysqlドライバに依存せずにinterface越しにmysqlのメソッドを呼び出すことができるようになっています
まとめ
mysqlドライバのコードを直接参照していなくても実行できる仕組みをまとめると、以下のようになっていました
- importした時のinitでsqlのdriverに
OpenConnector
メソッドを持つmysqlの構造体を格納 - sqlの初期接続時にdriverの
OpenConnector
メソッドを実行し、sql.DB
のconnector
にConnect
メソッドを持つmysql用の構造体を格納しておく - クエリ実行時に
connector
のConnect
メソッドを実行し、mysqlのコネクションを取得 - このmysqlコネクションが
QueryContext
メソッドを実装している
読んでないけどおそらくpostgresqlとかのドライバも同じ仕組みになっているのだろうと思われます
全体を振り返るとsqlパッケージでは様々なものがinterfaceで定義されていてOpenConnector
やConnect
はinterface越しに実行されています
これによってsqlパッケージはどのRDBのドライバを使うかに依存しないようになっています
設計が美しいですね
いい勉強になりました!!!